原因別アナフィラキシー
監修
昭和医科大学 医学部 小児科学講座
教授 今井 孝成 先生
アナフィラキシーの原因は食物がもっとも多く、薬物、ハチなどの昆虫の頻度が高くなっています1)。
日本における
アナフィラキシーの誘因
※FDEIA(food-dependent exercise-induced anaphylaxis):食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物を食べた後の、一定の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される病態。
※OIT(oral immunotherapy):経口負荷試験
早期に治ることが期待できない即時型食物アレルギー患者に対して、事前の食物経口負荷試験(oral food challenge, OFC)で症状が誘発される量を確認した後、原因食物を医師の指導のもとで継続的に摂取させ、耐性獲得(治る)を目指す治療。
調査概要:
日本アレルギー学会認定教育研修施設におけるアナフィラキシー症例の集積調査
調査期間:2015年2月~2017年10月
調査対象:調査対象施設内で発症または救急受診したアナフィラキシー患者
結果:集積症例数 767名(男性463名、年齢中央値6歳[四分位:3~21歳])
佐藤さくら 他. アレルギー 71: 120-129, 2022より引用
鶏卵、牛乳、クルミ、小麦、カシューナッツ、ピーナッツなど、特定の食べ物を食べたときに起こります。子どもから大人まで幅広い世代でみられ、世代による原因食物がことなります。特に乳幼児に多くみられます。
近年、木の実類によるアナフィラキシーが増えています。ショック症状を誘発
した原因食物の調査によると、クルミの割合が増加し、鶏卵、牛乳に次いで第3位になっています2)。
ショック症状を誘発した原因食物
消費者庁. 令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書. 令和6年9月より引用
また、原因となる食物を食べた後、多くは2時間以内に一定の運動をすることによって症状が誘発される「食物依存性運動
誘発アナフィラキシー(FDEIA)」もあります。
アナフィラキシーの増強因子には、運動やストレス、アルコール摂取、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、月経などが
あります。これらの因子が食物アレルギーの症状を悪化させることがあり、成人のアナフィラキシーでは約30%に関与して
いるとされています4)。
スズメバチ、アシナガバチなどのハチの毒液に対するアレルギー反応です。ハチ刺傷によるアナフィラキシーはアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多いことが知られています3)。
ラテックス(天然ゴム)はパラゴムの木の樹液に含まれる成分です。このラテックスに含まれるタンパク質がアレルゲンと
なって起こるのがラテックスアレルギーです。ラテックスは、医療用手袋やカテーテル、絆創膏などに使用されている他、
炊事用手袋、ゴム風船や避妊具、ゴム靴、輪ゴムなどの日用品にも使われている場合があります。
ラテックス(天然ゴム)を含む製品の例
日本ラテックスアレルギー研究会. ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018. 表5-1, p.10, 協和企画, 東京より引用
日本では、ラテックスによるアナフィラキシー症例の報告を受けて、天然ゴム製の医療用具について、製品の説明書や容器、包装などに「天然ゴムが使用されていること」「アレルギーの症状が生じやすいこと」を表示することが義務づけられて
おり、天然ゴム製品の識別は可能となっています6)。近年、ラテックスフリー、パウダーフリーの手袋が医療現場に導入されてきたことにより、ラテックスアレルギーの発症率は低下してきています5)。
また、ラテックスアレルギー患者さんの30~50%が、バナナ、アボカド、クリ、キウイフルーツなどの特定の果物に対して
アレルギー反応を示すことがあります。これはラテックスの原因タンパクと果物類などの原因タンパク質の構造が似通っていることで発症します。この現象は「ラテックス-フルーツ症候群」として知られています5)。
ラテックス-フルーツ症候群として
報告された主な食品
日本ラテックスアレルギー研究会. ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018. 表8-1, p.19, 協和企画, 東京より引用
まれですが、クラゲなどの海洋生物による刺傷7)、ハムスター8)、ヘビ、アリなどによる咬傷9)、日光蕁麻疹などの物理的刺激によるアナフィラキシー10)や、ダニに感作された状態でお好み焼きやホットケーキを食べた後に起こる経口
ダニアナフィラキシー(パンケーキ症候群)11)などの報告もあります。また、原因の検査をしても特定できず、原因不明となる場合も少なくありません10)。
参考文献
本サイトに掲載された健康情報は啓発を目的としたものであり医師等のヘルスケアプロバイダーに対する相談に取って代わるものではありません。
患者さんの治療に関しては、個々の特性を考慮し医師等のヘルスケアプロバイダーと相談の上決定すべきものです。