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アナフィラキシーの原因は食物がもっとも多く、薬物、ハチなどの昆虫の頻度が高くなっています1)

日本における
アナフィラキシーの誘因

アナフィラキシーの原因の割合を示す円グラフ。食物が68.1%、医薬品が11.6%、FDEIA(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)が5.2%、昆虫刺傷が4.4%、OIT(経口免疫療法)が2.5%、経口ダニが1.6%、その他が1.3%、不明が5.3%。食物が最も多い原因である。

※FDEIA(food-dependent exercise-induced anaphylaxis):食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物を食べた後の、一定の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される病態。

※OIT(oral immunotherapy):経口負荷試験
早期に治ることが期待できない即時型食物アレルギー患者に対して、事前の食物経口負荷試験(oral food challenge, OFC)で症状が誘発される量を確認した後、原因食物を医師の指導のもとで継続的に摂取させ、耐性獲得(治る)を目指す治療。

調査概要: 日本アレルギー学会認定教育研修施設におけるアナフィラキシー症例の集積調査
調査期間:2015年2月~2017年10月
調査対象:調査対象施設内で発症または救急受診したアナフィラキシー患者
結果:集積症例数 767名(男性463名、年齢中央値6歳[四分位:3~21歳])
佐藤さくら 他. アレルギー 71: 120-129, 2022より引用

食物

鶏卵、牛乳、クルミ、小麦、カシューナッツ、ピーナッツなど、特定の食べ物を食べたときに起こります。子どもから大人まで幅広い世代でみられ、世代による原因食物がことなります。特に乳幼児に多くみられます。

近年、木の実類によるアナフィラキシーが増えています。ショック症状を誘発
した原因食物の調査によると、クルミの割合が増加し、鶏卵、牛乳に次いで第3位になっています2)

鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツのイラスト

ショック症状を誘発した原因食物

ショック症状を誘発した原因食物を示す円グラフ(n=586)。鶏卵が136件で23.2%、牛乳が95件で16.2%、クルミが86件で14.7%、小麦が77件で13.1%、カシューナッツが37件で6.3%、落花生が34件で5.8%、イクラが23件、エビが16件、マカダミアナッツが13件、その他が69件。

消費者庁. 令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書. 令和6年9月より引用

また、原因となる食物を食べた後、多くは2時間以内に一定の運動をすることによって症状が誘発される「食物依存性運動
誘発アナフィラキシー(FDEIA)」もあります。

食物によるアナフィラキシーの
増悪因子3, 4)

アナフィラキシーの増強因子には、運動やストレス、アルコール摂取、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、月経などが
あります。これらの因子が食物アレルギーの症状を悪化させることがあり、成人のアナフィラキシーでは約30%に関与して
いるとされています4)

薬物

原因となる薬物は、ペニシリンなどの抗菌薬、アスピリンなどの解熱鎮痛剤の他、検査に使われる造影剤や局所麻酔薬、輸血製剤なども原因となる傾向があります3)

注射、錠剤のイラスト

ハチ毒

スズメバチ、アシナガバチなどのハチの毒液に対するアレルギー反応です。ハチ刺傷によるアナフィラキシーはアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多いことが知られています3)

ハチのイラスト

ラテックス5)

ラテックス(天然ゴム)はパラゴムの木の樹液に含まれる成分です。このラテックスに含まれるタンパク質がアレルゲンと
なって起こるのがラテックスアレルギーです。ラテックスは、医療用手袋やカテーテル、絆創膏などに使用されている他、
炊事用手袋、ゴム風船や避妊具、ゴム靴、輪ゴムなどの日用品にも使われている場合があります。

ラテックス(天然ゴム)を含む製品の例

①医療現場で使用する製品:天然ゴム製手袋、駆血帯、止血帯、粘着テープ、蘇生用のマスク・バッグ回路、カテーテル類、ドレーン類、血圧測定用のカフ、聴診器、経口・経鼻の吸引管、歯科用ラバーダム、超音波検査機器のプローブカバー、特殊な気管チューブ、シリンジ、電極パッド、注射ポート、薬液バイアルのゴム蓋、天然ゴム製のエプロン、輪ゴムなど ②家庭で使用する製品:風船、おしゃぶり、炊事用手袋、玩具、コンドーム、自転車や自動車、工具などのハンドルグリップ、スポーツ用品、靴底、伸縮性の繊物、カーペット、下着のゴム、哺乳瓶の乳首、ゴムバンド、輪ゴム、消しゴム、タイヤなど

日本ラテックスアレルギー研究会. ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018. 表5-1, p.10, 協和企画, 東京より引用

日本では、ラテックスによるアナフィラキシー症例の報告を受けて、天然ゴム製の医療用具について、製品の説明書や容器、包装などに「天然ゴムが使用されていること」「アレルギーの症状が生じやすいこと」を表示することが義務づけられて
おり、天然ゴム製品の識別は可能となっています6)。近年、ラテックスフリー、パウダーフリーの手袋が医療現場に導入されてきたことにより、ラテックスアレルギーの発症率は低下してきています5)

また、ラテックスアレルギー患者さんの30~50%が、バナナ、アボカド、クリ、キウイフルーツなどの特定の果物に対して
アレルギー反応を示すことがあります。これはラテックスの原因タンパクと果物類などの原因タンパク質の構造が似通っていることで発症します。この現象は「ラテックス-フルーツ症候群」として知られています5)

ラテックス-フルーツ症候群として
報告された主な食品

①ハイリスク群:アボカド、バナナ、クリ、キウイフルーツ ②その他:イチジク、パイナップル、パパイア、パッションフルーツ、モモ、西洋梨、クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、グレープフルーツ、メロン、イチゴ、ジャガイモ、トマト、ほうれん草、レタス、セロリ、多種スパイスなど(ただし記載されていない食品でも起こすことがある)

日本ラテックスアレルギー研究会. ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018. 表8-1, p.19, 協和企画, 東京より引用

その他

まれですが、クラゲなどの海洋生物による刺傷ししょう7)、ハムスター8)、ヘビ、アリなどによる咬傷こうしょう9)、日光蕁麻疹などの物理的刺激によるアナフィラキシー10)や、ダニに感作された状態でお好み焼きやホットケーキを食べた後に起こる経口
ダニアナフィラキシー(パンケーキ症候群)11)などの報告もあります。また、原因の検査をしても特定できず、原因不明となる場合も少なくありません10)

参考文献

  • 佐藤さくら ほか: アレルギー 2022; 71(2): 120
  • 消費者庁. 令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書.
  • 日本アレルギー学会: アナフィラキシーガイドライン2022. 2022
  • Bartra J et al.: Ann Allergy Asthma Immunol. 2023; 130(6): 733
  • 日本ラテックスアレルギー研究会. ラテックスアレルギー
    安全対策ガイドライン2018. 2018
  • 厚生労働省: 医薬品等安全性情報153号(概要)https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1103/h0329-1_15.html
  • 窪田 祥平 ほか: アレルギー2017; 66(6): 809
  • 則本 和伸 ほか: 日臨救医誌 2005; 8(1): 6
  • Victoria Cardona ほか: アレルギー 2021; 70(9): 1211
  • 城 理沙 ほか: アレルギー 2019; 68(1): 43
  • 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイド
    ライン2021. 第15章. 2021

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患者さんの治療に関しては、個々の特性を考慮し医師等のヘルスケアプロバイダーと相談の上決定すべきものです。

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