原因別アナフィラキシー
|食物アレルギー

牛乳・乳製品

昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

乳幼児の食物アレルギーの原因として、鶏卵に続いて2番目に多いのが牛乳・乳製品です。子どもも摂取することの多い牛乳、そして乳製品について、どのようなポイントに気をつければよいでしょうか。

牛乳は加熱しても発酵しても、アレルゲンの力が落ちることは期待できません。

牛乳アレルギーの多くは、牛乳タンパクの中の「カゼイン」が原因です。カゼインは耐熱性があり、加熱してもタンパク質の構造はほとんど変化せず、アレルギーの起こしやすさは変わりません。
発酵の場合も、カゼインの成分は分解されにくいため、ヨーグルトやチーズなどの加工食品も同じように注意が必要です。

牛乳が飲めないとカルシウム不足になりがち。カルシウムの多い食品で補いましょう。

牛乳アレルギーの子どものカルシウム摂取量は、牛乳アレルギーではない子どもと比較して半分程度と報告されています。必要なカルシウムを乳製品以外で効率的に十分にとることは難しいため、毎日の食事の組み合わせで日常的に摂取する習慣をつけましょう。

カルシウムの多い食品には、牛乳アレルギー用ミルク、煮干しなどの小魚類や青菜類、海藻、大豆製品などがあります。手軽にカルシウムをとれるように、アレルギー用ミルクを牛乳の代わりに料理に使用する、煮干しをふりかけにするなどの工夫をしましょう。

名称に「乳」という文字がついていても、牛乳、乳製品とは関係がない原材料があります。

加工食品に利用される「乳化剤」「乳酸菌」「乳酸カルシウム」などはその名称から、乳製品と誤解されやすいのですが、牛乳とは関係ありません。一方、「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「はっ酵乳」などの加工食品には牛乳が含まれるため、牛乳アレルギーの患者さんは食べられません。

牛乳は特定原材料として加工食品のアレルギー表示が義務づけられていますが、名称上の「乳」という文字の有無だけでは、一概に食べられるかどうかを判断できません。誤食なく、食べられる食品を増やすためには、アレルギー表示から、食べられる食品と食べられない食品を正しく見分けることが重要です。

牛乳(ミルク)アレルギー用ミルクは医師の指導のもとで正しく利用しましょう。

粉ミルクは牛乳由来のものがほとんどです。乳児に牛乳アレルギーがある場合、母乳や調製粉乳の代わりとなる牛乳アレルギー用ミルクが便利です。ただし、製品により含まれるタンパク質の種類や分解度がことなり、また、ビオチンなどの欠乏症のリスクがあることから、お子さんの症状によって医師の指示のもとに利用することが大切です。

また、ミルクアレルギー用ミルクには独特の苦みやにおいがあり、子どもが大きくなって味覚が発達してくると飲ませるのが難しい場合もあります。

※ビオチン:ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンの一種