アレルギー/アナフィラキシーに関連してよくお寄せいただく質問と回答をまとめました。
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アレルギーは「体質」が関係するため、親やきょうだいにアレルギーがあると、子どもも発症しやすくなる傾向があります。しかし、家族にアレルギーがあるからといって、必ず発症するわけではありません。アレルギーの発症にはダニやホコリ、ペット飼育、食生活などの環境要因も大きく関わっています。最近では、アレルギーに関係する遺伝子も少しずつ明らかになってきていますが、遺伝だけで決まるものではありません。
アナフィラキシーの原因でもっとも多いのは食物で、他にハチ毒や薬物、ラテックスなどが一般的に知られています。この他にも、輸血、クラゲによる刺傷(ししょう)、ハムスター、ヘビ、アリなどによる咬傷(こうしょう)が原因となった例も報告されています。食物によるアナフィラキシーの原因は、全体では鶏卵、牛乳、木の実類、小麦などが多いですが、年齢別には、そば、ピーナッツ、果物、エビやカニなどの甲殻類などさまざまな食物によってアナフィラキシーが引き起こされます。
血液検査で、特定の食物に対する IgE 抗体が「陽性」となっても、それだけで「食物アレルギー」が診断できるわけではありません。IgE 抗体が「陽性」は、「感作」といってアレルギーが起こる可能性があることを示すまでです。感作があった食物を食べて症状が出なければ、アレルギーとは診断されず、除去の必要も当然ありません。食物アレルギーの管理では、正しい診断にもとづく必要最小限の原因食物の除去が原則です。自己判断での除去は、栄養不足や生活の質の低下につながることもあるため、必ず医師と相談しましょう。
※特異的 IgE 抗体:免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の一種。即時型アレルギー反応にかかわります。特異的とは、特定の物質にのみ反応することを示します。
アレルゲンの特定にもっとも重要なことは丁寧な問診です。食物が原因として疑わしかったら、いつ、何を、どのくらい食べたか、どのような症状が、いつ頃から現れたか、症状はいつまで続いたのかなど詳細に確認します。可能性のある原因(アレルゲン)について、血液検査(血液中にアレルギー反応に関与する特異的 IgE 抗体※があるか)、皮膚テスト(プリックテスト:皮膚にアレルゲンを少量たらし、針で小さな傷をつけてアレルギー反応があるか)を行います。ただし、これらの結果は原因(アレルゲン)の推定には役立ちますが、確定するものではありません。食物アレルギーを疑うのであれば、必要に応じて食物経口負荷試験などを行います。
※特異的 IgE 抗体:免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の一種。即時型アレルギー反応にかかわります。特異的とは、特定の物質にのみ反応することを示します。
アナフィラキシーは、アレルギーが原因で全身に複数の臓器症状があらわれる病態なので、その症状はさまざまです。この中でもっとも多くみられるのは、赤み、じんましんやかゆみなどの“皮膚の症状”が全身性にみられます。次にせきこみ、ぜん鳴(ぜいぜい、ヒューヒュー)、強い息苦しさなどの強い“呼吸器系の症状”、他にも強い持続する腹痛や繰り返す嘔吐などの強い“消化器症状”もみられます。特に、のどの粘膜症状が強くなると、声がれ、のどが締め付けられる感じ、胸苦しさなど“窒息”の危険性が高まり、血圧低下など“循環器の症状”、つまりアナフィラキシーショックに陥ると、場合によっては生命を脅かすことがあります。これら症状は、すべてあらわれるわけではなく、患者ごとに異なります。
食物アレルギーは特定の食物が原因でアレルギー反応が起こり、じんましんや呼吸困難などのさまざまな症状があらわれることをいいます。このため、アレルギー反応を介さず、食物によって何らかの症状が出てくるものは、食物アレルギーと分けて考えます。例えば、牛乳を飲んでおなかがゴロゴロしたり下痢をしたりする乳糖不耐症※1、食物にとりついた細菌・ウイルス・寄生虫による食中毒、食物中に含まれる毒物(毒キノコやフグ毒など)による食中毒、もともと食物中に含まれる化学物質(ヒスタミンなど)による食物不耐症も食物アレルギーではありません。食物を食べて何らかの症状が出たからといって、自己判断で必要のない食物除去※2 を行うことなく、医師の正しい診断を受けましょう。
※1 乳糖不耐症:体質的に乳糖を消化する力の弱いもしくはない病態
※2 食物除去:アレルギーの原因となる食べ物を食べないようにすること
食物アレルギーの多くは食物の成分として含まれる一部の「タンパク質」が原因の免疫反応です。一方、食中毒は、食物に付着したウイルスや細菌や、毒キノコやフグ毒などにより生じる病気であり、免疫は関わりません。
離乳食開始前に顔からはじまる湿疹が、皮膚の保湿や適切な治療をおこなっても改善しない場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。このアトピー性皮膚炎の原因として食物が関与していることがあり、これを食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎と称します。ただし、こうした乳児の湿疹のすべてがアトピー性皮膚炎であったり、食物が関係しているとは限りませんので、医師に相談しましょう。
鶏卵・牛乳・小麦アレルギー以外は治りにくいとされています。鶏卵・牛乳・小麦アレルギーも、多くは就学前までに治ります。治る理由は、成長する過程で消化吸収機能が発達することがひとつの要因と考えられています。早めに医師に相談して適切な指導を受けることが大切です。
母乳がお子さんの食物アレルギーの発症に与える影響に関する研究はさまざまありますが、世界各国の食物アレルギーの治療指針において、発症を予防する目的での妊娠期や授乳中の母親の食物制限や除去は推奨されていません。むしろ、偏った食生活は母親や子どもの栄養不足を引き起こすリスクもあります。
食物アレルギーの原因は食物の「タンパク質」です。このタンパク質は一般的に、胃液や腸液などの消化液に消化されにくく、加熱しても簡単に構造が壊れません。このため、原因食物を調理したり発酵させたりしても、食べられるようには基本的にはなりません。正しい知識を持って対策しましょう。しかし、一部の食物には、加熱や発酵によって原因タンパク質の構造が変化し、アレルギーを起こす力(アレルゲン性)が低下します。なかでも代表的なのは鶏卵です。卵白の主要なアレルゲンタンパク質であるオボアルブミンは、加熱で容易に変性します。このため、一部の鶏卵アレルギー患者さんの中には、生卵や半熟卵は食べられなくても、加熱卵は食べられる場合があります。また、小麦や大豆アレルギーでも、しょうゆやみそなどの調味料は食べられるという例も少なくありません。ただし、これらはあくまで一部の例であり、すべての方に当てはまるわけではありません。自己判断で摂取せず、必ず医師の指導のもとで確認するようにしましょう。
レストランなどの外食では、ひとつの調理器具(鍋、包丁など)で複数の食材を調理するため、原因食物を含まない料理を注文しても、原因食物が混入※してくる可能性があります。うどんとそばが同じ釜でゆでられている場合、ゆでたお湯を介してうどんにそばが混入し、重症なそばアレルギー患者だと症状があらわれる可能性があります。
正しい診断をうけることが必須です。そのうえで、必要最小限の除去と誤食予防、緊急時対応に関する知識を身に着けましょう。そのうえで、除去しながらも楽しい食生活を送ることができるように頑張っていきましょう。
すべてのハチが刺すわけではなく、また、どのハチにアレルギーが出るかも個人差があります。一般に、アナフィラキシーを引き起こすハチとして、スズメバチとアシナガバチがあげられます。これらは攻撃性が強く、注意が必要です。またミツバチは、攻撃性は低いものの直接接触すると刺されることもあり、アナフィラキシーを起こすことがあります。ただ一度刺されたら、2 回目に刺されたときに必ず症状が誘発されるわけではありません。一度刺されて、からだに抗体が産生された場合に、症状が誘発される可能性がでてきます。
国内のスズメバチやアシナガバチは、7~9月にかけて営巣活動が最も活発になり、攻撃性も高まります。ハチ刺されによる事故が多いのもこの時期です。それ以外の季節は、夏に比べれば活動はおとなしく動きも鈍くなります。しかし、越冬するハチもいるため、一年を通じて注意をした方がよいでしょう。
仕事環境にハチがいる場合は、防虫網を着用するとよいでしょう。また、ハチは黒い色を攻撃する習性があるため、服装や荷物に黒っぽい色は避けましょう。林業や養蜂業など、ハチとの接触が多い職種では、アナフィラキシー対策として自己投与可能なアドレナリン製剤(アナフィラキシー補助治療剤)の携帯を医師と相談のうえ検討しましょう。
初めてハチに刺されてアナフィラキシーを起こす場合もあれば、初回はかゆみや腫れなどの局所症状があらわれただけで、再びハチに刺されたときにアナフィラキシーを引き起こすこともあります。ハチ毒によるアナフィラキシーは、刺されてから呼吸停止、もしくは心停止までの平均時間は 15 分といわれています。このため、ハチに刺されたら直ちに近隣の人に連絡を取り、何らかの全身症状があらわれたら、早急に近くの医療機関を受診してください。
ハチ毒、ハウスダスト、食物、花粉など、アレルゲンを少しずつ体内に取り込んで、徐々に抵抗力をつけていく「アレルゲン免疫療法」があります。ハチ毒アレルギーの場合は、16 歳以上で以前にアナフィラキシーの経験があり、ハチ毒に対する抗体がある人が対象となります。この治療が受けられるのは特定の医療機関に限られており、保険は適用されません。なお、2025 年 5 月現在、治療に用いられるハチ毒エキスの入手が困難であることから、国内では施行ができない状況にあります。
病院を受診する前にアナフィラキシー症状の程度に応じて、処方を受けている自己投与可能なアドレナリン製剤や内服薬などを用いて対処します。特に下記の表(自己投与可能なアドレナリン製剤を使用すべき症状)の症状がひとつでも該当する場合には「自己投与可能なアドレナリン製剤」をすぐに使用することが求められます。
過去にアナフィラキシーを起こしたことがあり、主治医から指示を受けている人は、主治医の指示に従って対処してください。自己投与可能なアドレナリン製剤が必要となったときには、アナフィラキシーの原因となったものを取り除くとともに、すぐに自己投与可能なアドレナリン製剤を投与し、救急車を呼んでください。そして、足を高くするなど楽な姿勢で救急車の到着を待ち、病院で適切な治療を受けてください。
アナフィラキシーが起こった場合は、まずはすぐに救急車を呼ぶことが最優先です。命に関わる重篤なアレルギー反応であるため、迅速な対応が必要です。症状が落ち着いた後や原因を調べるためには、アレルギー科、皮膚科、内科、小児科(小児の場合)などで、アレルギー専門医が在籍する医療機関を受診し、適切なフォローアップを受けましょう。専門医がいる病院は、日本アレルギー学会の「専門医・指導医一覧」から確認できます。
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患者さんの治療に関しては、個々の特性を考慮し医師等のヘルスケアプロバイダーと相談の上決定すべきものです。