よくある質問 Q&A
昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生
獨協医科大学埼玉医療センター 呼吸器・アレルギー内科 准教授 平田 博国 先生
帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 教授 山口 正雄 先生
アレルギー/アナフィラキシーに関連してよくお寄せいただく質問と回答をまとめました。
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- アレルギーとアナフィラキシーは同じですか?
- アレルギーとは、原因物質に対する過剰な免疫反応を指します。一方で、アナフィラキシーは、そのアレルギー反応によって皮膚や呼吸器、消化器など複数の臓器に急速に全身性の症状が出る状態を指します。さらに、アナフィラキシーの症状のうち、ショック状態(血圧低下や意識障害など生命の危機的な状態)に陥っている状況をアナフィラキシーショックといいます。
- 日本では、アナフィラキシーで死亡する例はどれくらいあるのでしょうか?
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厚生労働省の統計で、毎年50~70人の死亡例が報告されています。
アナフィラキシーの原因でもっとも多いのは食物ですが、死亡まで至る原因は、食物よりも薬物や蜂毒が多くなります。これは、薬物や蜂毒によるアナフィラキシーでは、重篤な症状があらわれるまでの時間が数分~15分と極めて短く、適切な対処が間に合わないことも要因のひとつとして考えられます。
- アナフィラキシーの原因には、どのようなものがありますか?
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アナフィラキシーの原因でもっとも多いのは食物で、他に蜂毒や薬物、ラテックスなどが一般的に知られています。この他にも、輸血、クラゲによる刺傷(ししょう)、ダニやハムスターなどによる咬傷(こうしょう)が原因となった例も報告されています。
食物によるアナフィラキシーの原因は、全体では鶏卵、牛乳、小麦が多いですが、年齢別には、そば、ピーナッツ、果物、えびやかになどの甲殻類などさまざまな食物によってアナフィラキシーが引き起こされます。
- アナフィラキシーの原因(抗原)を推測する検査について教えて下さい。
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アレルゲンの特定にもっとも重要なことはていねいな問診です。後述のとおり、血液や皮膚検査の結果は原因の推測に役に立つのであって、診断を確定するものではありません。
検査でよくおこなわれるのは、血液中にアレルギー反応に関与するIgE抗体※があるかを調べる検査です。この検査では食物、ダニ、昆虫、植物などについて幅広く調べることができます。また、皮膚テスト(プリックテスト:皮膚にアレルゲンを少量たらし、針で小さな傷をつけて反応を見るテスト)がおこなわれることも多いです。
いずれにせよ、検査では、疑わしいアレルゲンが推定できるだけであり、それを特定するためには、必要に応じて食物除去試験や食物負荷試験がおこなわれます。
※IgE抗体:免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の一種。即時型アレルギー反応にかかわります。
- アナフィラキシーが起こるとどんな症状があらわれるのですか?
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アナフィラキシーはもともと全身に複数の臓器症状があらわれる病態なので、その症状はさまざまです。この中でもっとも多くみられるのは、赤み、じんましんやかゆみなどの“皮膚の症状”です。次にくしゃみ、せき、ぜいぜい、息苦しさなどの“呼吸器系の症状”、他にも、目のかゆみやむくみ、くちびるの腫れなどの“粘膜の症状”、腹痛や嘔吐などの“消化器症状”もみられます。
特に、のどの粘膜症状が強くなると、声がれ、のどが締め付けられる感じ、胸苦しさなど“窒息”の危険性が高まり、血圧低下など“循環器の症状”、つまり“ショック症状”に陥ると命を落としかねません。アナフィラキシーの症状は、とても危険な状態になりやすい病態といって過言ではありません。
- アドレナリン自己注射薬がほしいのですが、薬局で購入できますか?
- アドレナリン自己注射薬は、専門の医師の診断と処方箋が必要です。このため、ドラッグストアや薬局で処方箋がなければ購入することはできません。2011年9月より、健康保険が適用されるようになりました。
- 食物アレルギーと間違えやすい病気には、どんなものがありますか?
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食物アレルギーは特定の食べ物が原因でアレルギー反応が起こり、じんましんや呼吸困難などのさまざまな症状が出ることをいいます。このため、アレルギー反応を介さず、食物を食べることで何らかの症状が出てくるものは、食物アレルギーと分けて考えます。例えば、牛乳を飲んでおなかがゴロゴロしたり下痢をしたりする乳糖不耐症※1や、食中毒、もともと食物中に含まれる毒物(毒キノコやフグ毒など)による症状、もともと食物中に含まれる化学物質(ヒスタミンなど)による症状も食物アレルギーではありません。
食べ物を食べて何らかの症状が出たからといって、自己判断で必要のない食物除去※2をおこなうことなく、医師の正しい診断を受けましょう。
※1 乳糖不耐症:体質的に乳糖を消化できない症状
※2 食物除去:アレルギーの原因となる食べ物を食べないようにすること
- 乳幼児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギーは関係ありますか?
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乳児のアトピー性皮膚炎には食物が原因である例が多くみられ、離乳食開始前に顔からはじまる湿疹が、スキンケアや適切な外用薬治療によっても症状が改善せずに経過します。しかし、こうした湿疹のすべてがアトピー性皮膚炎であったり、食物が関係しているわけではなかったりするので、その診断は専門の医師に相談しましょう。
- 食物アレルギーは、成長すれば治るのでしょうか?
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幼児期後半以降(成人も含む)に発症した食物アレルギーは治りにくいとされています。これに対して、乳児期や幼児期前半に発症した場合は、年齢とともに比較的治りやすいと考えられています。また、原因食物による治りやすさの違いもあり、鶏卵、牛乳、小麦、大豆は、6歳までに約9割が食べられるようになります。これは、成長する過程で消化吸収機能が発達することがひとつの要因と考えられています。
治る可能性をより高めるためにも、早めに専門の医師に相談して適切な指導を受けることが大切です。
- 授乳中ですが、子どもの食物アレルギー発症予防のために、母親が食物除去をおこなう必要があるのでしょうか?
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母乳がお子さんの食物アレルギーの発症に与える影響に関する研究はさまざまありますが、現在、世界各国の食物アレルギーの治療指針において、発症を予防する目的での妊娠、授乳中の母親の食物除去は推奨されていません。むしろ、偏った食生活は母親や子どもの栄養不足を引き起こすリスクもあります。
- アレルギーの原因食物でも、しっかり加熱したものや、発酵食品であれば食べても大丈夫ですか?
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食物アレルギーの原因は食品の「タンパク質」成分です。このタンパク質は一般的に、胃液や腸液などの消化液に消化されにくく、加熱してもかんたんには壊れない構造をしています。このため、原因食物を調理したり発酵させたりすれば食べられやすくなると考えることは基本的にはできません。正しい知識を持って対策しましょう。
しかし、一部の食物には、加熱や発酵によってタンパク質の構造が変化し、食べられやすくなるものがあります。そのなかで代表的なものは鶏卵であり、卵白タンパクのオボアルブミンは加熱でかんたんに変性するため、鶏卵アレルギーの患者さんの中には、生卵や半熟卵は食べられなくても、加熱卵は食べられるという例を経験される方がいらっしゃいます。また、大豆アレルギーでも、しょうゆやみそなどの調味料は食べられるという例も少なくありません。
- 食物アレルギーの子どもに風邪薬を飲ませたいのですが、どんなことに気をつければ良いでしょうか?
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医薬品の中には、卵白成分であるリゾチームや、牛乳成分であるカゼインなどが配合されている場合があります。薬局やドラッグストアで薬を手にするときは、必ずアレルギーの有無や状態について正しく薬剤師に伝えるようにしましょう。また、最終的には自分で確認することも大事です。
- そばアレルギーがあります。そば屋でうどんを注文したにもかかわらず、アレルギー症状が出てしまいました。今後の外食はどうしたらよいでしょうか?
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レストランなどではひとつの調理器具(鍋、包丁など)で複数の食材を調理するため、原因食物を含まない料理を注文したはずなのに、それら食物が混入※してくる可能性があります。うどんとそばが同じ釜でゆでられている場合、ゆでたお湯を介してうどんにそばが混入する可能性があるわけです。
原因食物の完全除去を指導されている場合は、このような理由で外食は控えるべきであり、外食する場合は、リスクを理解して万が一にそなえる必要があります。
※専門用語でコンタミネーションといいます。
- 食物アレルギーの対策はどのようにするのでしょうか。
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アレルギーを引き起こす原因 (アレルゲン)を知ることが対策のスタートです。まずは医師に相談してきちんと診断してもらい、アレルゲンがはっきりしたら、医師の指導のもと、原因と確定した食物の除去を行います。
- どんな蜂でも、刺されるとアナフィラキシーが起こるのでしょうか?
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すべての蜂が刺すわけではなく、また、どの蜂にアレルギーが出るかも個人差があります。一般に、アナフィラキシーを引き起こす蜂として、スズメバチとアシナガバチがあげられます。これらは攻撃性が強く、注意が必要です。またミツバチは、攻撃性は低いものの直接接触すると刺されることもあり、アナフィラキシーを起こすことがあります。
- 登山が好きで、1年を通じて山や森に行きます。蜂刺されに特に注意しなければならない季節はあるのでしょうか?
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蜂刺されによる事故が多いのは7~9月の夏場で、特にスズメバチは、発生時期である9~10月を控えた8月下旬頃から攻撃的になるといわれています。それ以外の季節は、夏に比べれば活動はおとなしく動きも鈍くなります。しかし、越冬する蜂もいるため、一年を通じて注意をした方がよいでしょう。
- 林業に携わっており、作業中に蜂に遭遇することが多いです。蜂に刺されないためにはどのような対策をしておけばよいでしょうか?
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仕事環境に蜂がいる場合は、防虫網を着用するとよいでしょう。また、蜂は黒い色を攻撃する習性があるため、服装や荷物に黒っぽい色は避けましょう。
林業や養蜂業など、蜂との接触が多い職種では、アナフィラキシー対策としてアドレナリンの自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)の携帯を専門医師と相談のうえ検討しましょう。
- 以前に蜂に刺されましたが、少し腫れたかなと思う程度で、特に変わった症状はありませんでした。蜂毒アレルギーではないと考えて大丈夫でしょうか?
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初めての蜂刺され事故でアナフィラキシーを起こす場合もあれば、初回はかゆみや腫れなどの局所症状があらわれただけなのに、再び蜂に刺されたときにアナフィラキシーを引き起こすこともあります。
蜂毒によるアナフィラキシーは、刺されてから心停止までの平均時間は15分といわれています。このため、蜂に刺されたら直ちに近隣の人に連絡を取り、何らかの全身症状があらわれたら、早急に近くの医療機関を受診してください。
また、既に、アドレナリンの自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)をお持ちの方は、その使用方法について普段からしっかり確認し、緊急の場合でも落ち着いて対応できるようにしておくことが大事です。
- 蜂毒アレルギーは治療できますか?アレルゲンを少しずつ注射して、身体を慣らしていく方法があると聞きました。
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蜂毒、ハウスダスト、食物、花粉など、アレルゲンを少しずつ体内に取り込んで、徐々に抵抗力をつけていく「アレルゲン特異的免疫療法」があります。蜂毒アレルギーの場合は、16歳以上で以前にアナフィラキシーの経験があり、蜂毒に対する抗体がある人が対象となります。この治療が受けられるのは特定の医療機関に限られており、現在保険は適用されておりません。
- アナフィラキシーの治療はどのようにおこなわれるのでしょうか?
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症状が軽い場合は、治療は症状によって異なります。ごく軽い皮膚粘膜症状の場合は、抗ヒスタミン薬、ごく軽い呼吸器症状の場合は気管支拡張薬が用いられます。
一方で、生命の維持を脅かしうる重篤な症状、例えばショック症状(血圧低下、意識障害など)や強いのど(上気道)の粘膜症状(声がかすれる、のどや胸が締め付けられる感じ、胸苦しさなど)、強い呼吸器症状(ぜいぜい、ヒューヒュー、呼吸困難など)があらわれた場合には、速やかにアドレナリンを投与する必要があります。
アナフィラキシーの症状の進行は非常に早く、また医療機関にたどり着くまで時間がかかることから、適切なタイミングで医療従事者がアドレナリンを投与できるとは限りません。このため、アナフィラキシーのリスクの高い方は、普段からアドレナリン自己注射薬を携行し、アナフィラキシーへの対処法を主治医としっかり相談しておきましょう。
- アナフィラキシーが起こったらどのように対処したらよいでしょうか?
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過去にアナフィラキシーを起こしたことがあり、主治医から指示を受けている人は、主治医の指示に従って対処してください。アナフィラキシー補助治療剤が必要となったときには、アナフィラキシーの原因となったものを取り除くとともに、すぐにアナフィラキシー補助治療剤を太ももの前外側に注射し、救急車を呼んでください。そして、足を高くして楽な姿勢で救急車の到着を待ち、病院で適切な治療を受けてください。