アナフィラキシーって
こんな病気
アナフィラキシーの症状
昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生
複数の症状がみられたら「アナフィラキシー」かもしれません
アナフィラキシーの症状はさまざまです。もっとも多いのは、じんましん、赤み、かゆみなどの「皮膚の症状」。次にくしゃみ、せき、ぜいぜい、息苦しさなどの「呼吸器の症状」と、目のかゆみやむくみ、くちびるの腫れなどの「粘膜の症状」が多いです。そして腹痛や嘔吐などの「消化器の症状」、さらには、血圧低下など「循環器の症状」もみられます。これらの症状が複数の臓器にわたり全身に急速にあらわれるのが、アナフィラキシーの特徴です。
特に、急激な血圧低下で意識を失うなどの「ショック症状」も1割程みられ、これはとても危険な状態です。
アナフィラキシーの可能性が高い場合
次の3つのうち、いずれかに当てはまる場合は、アナフィラキシーの可能性が高いとされます。
突然(数分~数時間)、皮膚や粘膜の症状があらわれ、さらに、呼吸器系の症状あるいは血圧の低下などのうち少なくとも1つの症状がある場合
抗原と疑われるものに触れる、あるいは食べたり飲んだりした数分~数時間後、次の症状のうち2つ以上が突然あらわれた場合
すでに抗原とわかっているものに触れる、あるいは食べたり飲んだりした数分~数時間後、血圧の低下がみられた場合
Simons, F.E.R. et al.:J Allergy Clin Immunol 127(3):587, 2011より作図
症状が出るまでの時間は、アレルゲンによってことなります
アナフィラキシーの特徴のひとつは、短時間で症状があらわれること。症状が出るまでの時間は、アレルゲンや患者さんによって差があります。
薬物や蜂毒は直接体内に入るため、早く症状が出る傾向があります。これに対し、食べ物は胃や腸で消化され吸収されるまでに時間がかかるため、症状が出るまで薬物や蜂毒よりは時間がかかることが多いです。アナフィラキシーが原因で心停止に至った例の、心停止までの平均時間は、薬物で5分、蜂毒が15分、食物では30分といわれます(アナフィラキシーがすべて心停止に至るわけではありません)。
また、アナフィラキシーは、一度おさまった症状が再びあらわれることもあります※。「おさまったから大丈夫」と安心はせず、すぐに病院で診断を受けることが大切です。
※二相性反応といいます。
アレルゲンによる心停止発現までの時間(中央値)[海外データ]
【試験概要】
対象:英国立統計局(The Office for National Statistics:ONS)に1992~1998年までに登録された死亡を含むアナフィラキシー患者124例
方法:死亡を含む致死的アナフィラキシー発現症例の、既往歴、ショック反応、検死などの調査結果から、アナフィラキシー発現から心停止までの時間、アドレナリン使用のタイミング、予後などを調査した。
Pumphrey, R. S. H.: Clin Exp Allergy 30(8):1144, 2000より作図