検査と治療
治療
昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生
獨協医科大学埼玉医療センター 呼吸器・アレルギー内科 准教授 平田 博国 先生
帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 教授 山口 正雄 先生
根本的治療
経口免疫療法
経口免疫療法とは、経口負荷試験によって症状が誘発される量を調べ、その量を基準にして、専門の医師の管理のもとで段階的に食べる量を増やしながら、最終的に耐性を獲得させることをめざす取り組みです。
経口免疫療法は慎重に
これまで耐性獲得を待つしかなかった、あるいは、耐性獲得をあきらめざるを得なかった重い食物アレルギー患者さんたちにとって、この経口免疫療法は画期的な変化であり、多くの患者さんがその効果に期待しています。
しかし、メディアなどでも取り上げられる情報は“効果”を強調するあまり、“副反応”が置き去りにされている傾向があります。経口免疫療法には、アナフィラキシーショックを含めた症状を誘発する危険性や、思いもよらない副作用があらわれる危険性があります。その中で日々アレルゲンを食べ続けることは、患者さんとその家族にとって大きな肉体的・精神的ストレスとなってしまいます。
こうした中で、これらの問題に適切に対応できる能力のある専門の医師によって経口免疫療法は実施されることが求められています。日本小児アレルギー学会や世界各国の治療指針において、経口免疫療法は“研究的な段階にあり、専門の知識をもった医師のもとで実施されるべき”と明記されています。
自宅で安易に少しずつアレルゲンを食べていくことは、患者さんがリスクを背負うことになるので、避けるべきです。経口免疫療法に取り組みたい場合は、専門の医師のもとで、食物負荷試験等を通じて経口免疫療法の実施に適しているかを評価してもらい、十分なインフォームド・コンセント※が得られたうえで進めるべきでしょう。
※インフォームド・コンセント:医師が患者さんに対して、受ける治療内容の方法や意味、効果、危険性、その後の予想や治療にかかる費用などについて、十分にかつ、わかりやすく説明をし、そのうえで治療の同意を得ることをいいます。
減感作療法/アレルゲン特異的免疫療法
蜂毒アレルギーの原因となっているアレルゲン(蜂毒成分)を徐々に身体の中に入れて慣らしていき、過剰なアレルギー反応を抑えていく方法です。注射により、定期的に少しずつ抗原の濃度、量を増やしながら治療をおこないます。この治療は、一部の専門の医療機関において、自由診療で実施されています。
対症療法
アナフィラキシー補助治療剤(アドレナリン)
ショック症状(ぐったり、意識障害、失禁など)やのどの強い症状(のどが締め付けられる感じ、声がれ、声が出ないなど)、呼吸器系の強い症状(強い喘鳴、呼吸困難など)があらわれた場合には、速やかにアドレナリン自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)※を用います。
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある、もしくは、起こす危険性があると思われる場合は、緊急時にそなえてアドレナリン自己注射薬を常に携帯しておくとよいでしょう。
処方には専門の医師の診断が必要です。2011年9月に保険適用となり、それまで自費扱いだったものが、健康保険による一部負担で処方を受けることができるようになりました。
緊急時に使用するものなので、日頃から正しい使用法をしっかり理解しておく心構えが必要です。万が一のときに、適切な対処法がとれるように相談しておきましょう。
※アドレナリン自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)は、症状の進行を一時的に緩和させ、ショックを防ぐための薬です。
アドレナリン以外の対症療法
アナフィラキシーの治療法は症状によってことなります。
軽い皮膚や粘膜症状の場合は抗ヒスタミン薬、呼吸器症状には気管支拡張薬、症状が重くなってくると経口副腎皮質ステロイド薬などの内服薬が用いられます。