特集・メッセージ
専門医に学ぶ食物アレルギー

食物アレルギー・アナフィラキシーの疑問に答えるコンテンツです。
クリスマスやお正月などの行事、お子さんの進級などの環境変化の際に浮かぶ疑問とそれに対する解説をQ&A形式で紹介しています。
以下のキーワードボタンから、興味のあるテーマのQ&Aを検索することもできます。

昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

40代 5歳のお子さん

40代
5歳のお子さん

子どもがリンゴを食べて、唇が腫れたことがあります。
今後、リンゴアレルギーの症状が強く出ないか心配です。
リンゴジュースやリンゴ酢、アップルパイなどは口にしても大丈夫なのでしょうか?

#果物

#皮膚炎

リンゴなどの果物を食べた直後に唇や舌、口の中が腫れたり、かゆみやイガイガする感じがあらわれ、もともと花粉症がある場合「花粉・食物アレルギー症候群」の可能性があります。この場合、全身の強い症状はほとんどおこしません。

花粉・食物アレルギー症候群は、果物のアレルゲンが熱や消化で容易に壊れるため、加熱殺菌したジュースや発酵させたリンゴ酢、加熱調理したアップルパイなどは食べられることが多いです。

果物アレルギーの多くは、花粉・食物アレルギー症候群ですが、なかには鶏卵や牛乳アレルギーなどと同じように皮膚症状や呼吸器症状を呈し、一部アナフィラキシーに陥る場合があるので、注意が必要です。
具体的な「食べられる範囲」についてご自身で判断できない場合は、主治医の指示に従いましょう。

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

監修
昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 1歳のお子さん

30代
1歳のお子さん

娘が小麦アレルギーなのですが、離乳食でオートミールを食べさせてもよいのでしょうか?
また、食べものだけでなく、麦茶など麦類が使われている飲みものも与えてはいけないのでしょうか?

#小麦

#乳児

小麦アレルギーであってもほかの麦類(大麦・ライ麦・オーツ麦など)を食べられる人と食べられない人がいます。
医師に相談しながら、食べられる範囲を確認していきましょう。

オートミールはオーツ麦のもみ殻を取り除き、食べやすく加工した食品です。小麦アレルギーでもオーツ麦は食べられることが多いですが、製造過程で小麦が混入する可能性があるので注意が必要です。
また、麦茶は大麦を焙煎・抽出したものです。大麦も、小麦アレルギーでも食べられることが多く、まして麦茶はアレルゲン量がごくわずかなため、飲める人がとても多いです。

具体的な「食べられる範囲」は、主治医の指示に従いましょう。

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

監修
昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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40代 5歳のお子さん

40代
5歳のお子さん

息子がエビアレルギーです。お正月に実家に帰省すると、毎年、お節料理に伊勢海老が出ます。
息子は食べられないと義母に伝えたのですが、「アレルギーは食べれば治る」と言われました。どうしたらよいでしょうか?

#甲殻類

#行事

祖父母が孫に誤食させてしまうことは、実はよくあることです。これは食物アレルギーに対する無理解が十分でないことが原因です。お子さんの命を守るためにも、一度しっかりと食物アレルギーのことを説明して理解してもらいましょう。

昨今、原因食物を積極的に食べることで、早期の治癒を目指す取り組みが広がっています。このため、安易に「アレルギーは食べれば治る」と考えられたり、言われたりします。
しかし、食べるにしても、安全に食べられる量を、日常的に慎重に食べ進めることが必要です。このため個人の判断で食べ進めることにはリスクがあることを承知しておく必要があります。

お義母さんには、最新の正しい食物アレルギーの考え方を旦那さんと一緒に、話し合う時間を持つと良いですね。

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

監修
昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 7歳のお子さん

30代
7歳のお子さん

もうすぐバレンタインデーなので子どもと一緒に、お友だちのためにアーモンドパウダーを使ったチョコレートケーキを作りたいと思っています。
食物アレルギーがあるお友だちも多いのでふと心配になったのですが、渡してもよいものでしょうか?

#木の実類

#行事

お子さんがお友だちにあげたものでアレルギー症状が出てしまったらと思うと心配になりますよね。チョコレートケーキをあげる前に、必ず相手の保護者にアレルギーに関して確認をしましょう。

最近の食物アレルギーの全国調査では1)では、原因食物の3位は小麦を抜いて「木の実(ナッツ)類」となっています。特に幼児期の原因食物で一番多い食品であり、クルミ、カシューナッツ(ピスタチオ)が大半を占めます。

ナッツアレルギーは、ナッツとしてひとくくりに除去はせず、個別に除去の必要性を診断します。また、落花生(ピーナッツ)はマメ科の食品であり、そもそも木の実類には分類されないので、木の実類とひとくくりに除去する必要はありません。

1) 杉崎千鶴子 他.アレルギー.2023;72 (8): 1032-1037.

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

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昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 3歳のお子さん

30代
3歳のお子さん

子どもが2歳のときに卵アレルギーの診断を受けました。
ネットでは卵白のアレルゲンが主な原因と書いてあったので、卵黄や鶏肉、魚卵は食べさせても問題ないのでしょうか?

#卵

鶏卵アレルギーの主なアレルゲンは卵白です。このため、鶏卵アレルギーでも、卵黄は食べられる場合がほとんどです。また、鶏肉や魚卵はそもそも鶏卵とはアレルゲンが異なるため、除去する必要はありません。

卵白アレルゲンには、主にオボムコイドとオボアルブミンの2つがあります。IgE検査で卵白が陽性でも、オボムコイドが低値や陰性であると、その患者さんは卵白アレルギーはあるが、オボアルブミンの方に反応していることが推測できます。オボアルブミンは過熱するとタンパク質が壊れやすい特徴があるためオボアルブミンにだけ反応すると推察される患者さんは、加熱鶏卵が食べられる可能性があります。
主治医の先生とともに、食物経口負荷試験をおこなって確認すると良いでしょう。

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

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昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 6歳のお子さん

30代
6歳のお子さん

今年小学生になる息子がいます。
牛乳アレルギーのため保育園では飲んでいませんでしたが、
小学校でも飲ませないという選択はできるのでしょうか。
また、同じ学年のお友だちと比べると背が低く、このまま飲まないままで成長に問題がないか心配です。

#牛乳

#小学校

ランドセルを背負ったお子さんの姿は、感慨深いですね。一方で、子どもが親離れしていく中で、心配なことも増えてきますよね。
学校におけるアレルギー対応は、文部科学省がガイドラインを出しており、多くの自治体や学校で積極的に取り組まれています。牛乳などの主要な食品の給食などアレルギー対応は、行われていることが多いですね。
ただし学校にアレルギー対応を求める場合は、生活管理指導表の提出が必要です。主治医に早めに相談しましょう。

一方、牛乳・乳製品を除去していると、カルシウム不足に陥ることは明らかです。このため、積極的に他の食材(大豆製品など)でカルシウムを補うことが必要です。しかしカルシウムは健康な骨の発育には必要ですが、身長の伸びはカルシウムの摂取量で決まるものではありません。著しく身長が低い場合は、むしろ遺伝または内分泌的な問題がないかを調べる必要があります。まずはかかりつけ小児科医に相談してみてください。

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

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昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 1歳のお子さん

30代
1歳のお子さん

アレルギーのある息子が保育園に入園します。先日、入園説明会で生活管理指導表をもらいました。この生活管理指導表はどのような使い方をするのでしょうか。

#新学期

#乳児

#幼児

#小児

生活管理指導表は“子どもを中心に据えた、医師と保護者、保育所の重要なコミュニケーションツール”であり、保育所(保育園)のアレルギー対応は、医師が記入した生活管理指導表をもとに行われます。(保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版))
保育所などで、アレルギーに対して特別な配慮が必要と保護者が考えた場合、提出が必要となります。保育所は、生活管理指導表をもとにアレルギー対応を具体的に計画します。計画内容を保護者と面談の時間をもって確認したうえで、取り組みを進めます。生活管理指導表の内容は、保育所職員間で共有され、共通理解が図られます。

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なお、生活管理指導表は保険適用がありますが、指導表以外の書式を用いた場合は診断書扱いとなります。また生活管理指導表であっても、記入する医師が通園保育所の園医の場合は、診断書扱いとなります。まずは、かかりつけ医にご相談ください。
生活管理指導表はこども家庭庁のホームページからダウンロードすることもできます。

出典:こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/1bd0041a/20231016_policies_hoiku_38.pdf (参照 2024-01-26)

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

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昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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30代 6歳のお子さん

30代
6歳のお子さん

今年小学生になる、食物アレルギーがある娘がいます。アレルギーのために、お友だちとの関係に影響しないか心配です。本人へどのようにアレルギーのことを伝えれば良いのか迷っているのですが、誤解をさせずに伝える方法を教えてください。

#新学期

#幼児

#小児

アレルギーについて、小学生のお子さんに伝えるのは難しいですよね。しかし、お子さん自身が病気を理解し、そのうえで周りに伝えていくことは、今後の生活においてとても重要かつ必要なことです。子どもの重症度や除去する食品の種類、これまで経験してきた症状、そしてもともとの性格などが個々に異なるので、伝え方もそれぞれです。

まず保護者のペースで話を進めるのではなく、お子さんの気持ちや意志を確認しながら進めましょう。
アレルギーに関して、お子さんが持っている学校生活への不安・心配ごとなどを先に聞いておくと良いでしょう。
知っておいてほしいことがたくさんあっても、一度にすべてを話そうと思わないようにしましょう。重要な話から順番に、理解度を確認しながら、場合によっては数回に分けて話しましょう。また就学前の子どもは、学校生活のイメージが十分に持てていません。このためできるだけ具体的に話すことを意識しましょう。そして話をしたあとは、子どもがどのように捉えたのか、不安や心配が解消されたのか再確認しましょう。

就学前に話しておきたい点は以下のようなことです。

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  1. 食物アレルギーがどんな病気であるか
    まずは食物アレルギーをどのように理解しているか聞いてみましょう。誤った理解は正し、またまったく理解していなければ「体の栄養になる食べものを、悪いものだと間違えて攻撃してしまって、かゆくなったり息が苦しくなったりするんだよ」など、お子さんが理解できる言葉で伝えてください。このサイト内には「絵本で学ぶ食物アレルギー」や、その読み聞かせ動画があります。それらを一緒に読みながら説明するのも良いでしょう。
  2. 食べてはいけないものが何かを伝える
    食べてはいけないものを、絵や写真を見せながら教えましょう。食べものそのものに加えて、加工食品や調理品なども教えましょう。また文字としての理解も進めましょう。漢字表記、カタカナ表記なども、理解力に合わせて早めに教えられると良いです。
    医療機関で配布されている「食物アレルギーサインプレート※」を活用したり、スマートフォンで一緒に調べてみたりすると、楽しく学べ、より理解が深まります。
    ※食物アレルギーサインプレート…食物アレルギーであることを周囲に伝え、注意や理解を促すためのメッセージツール。子どものアレルギーへの自覚を育てる上でも役立つ。

    以下はお子さんの発達段階や理解力に合わせて、成長過程で、教えられるように意識しておきましょう。
  3. 間違えて食べるとどうなるかを伝える
    強い症状を強調して指導すると、かえって恐怖心が強くなって行動が萎縮してしまうことがあります。正しく怖がることを意識して教えましょう。大事なのは、体に起きてきた変化を早めに察知して、周りの大人にすみやかに異常を伝えられるようになることです。このため、起こり得る体の変化を理解させましょう。
  4. 症状が出たときどうすれば良いのかを伝える
    症状が理解できても、周りの大人に伝えられない子どもはたくさんいます。このときばかりは遠慮したり、我慢したりすることは、子どもにとって危険な場合もあります。勇気を出して大人に伝える力を身に着けさせてください。
  5. お友だちにも知っておいてもらったほうが良いことを話しておく
    自分が食物アレルギーであることを隠したがる子どもがいます。恥ずかしかったり、目立ちたくなかったり、さまざまな理由があります。どうしてそう思うのかを話してもらい、共感しましょう。そのうえで、自分の体を守り、楽しい学校生活を送るために、お友だちには知っておいてもらった方が良いことを教えましょう。
    知ってもらうことで、緊急時に大人が周りにいなかったり、自分で助けを呼べない状態になったりしたときに、お友だちに助けてもらうことができます。また給食等で食物アレルギーの子どもは特別な扱いをされるので、中には「ずるい!」などと感じるお友だちがいることもあります。正しく知ってもらうことで、お友だちに優しく受け止めてもらえることになります。そうしたことが、子どもの安心感や自己効力感※の向上に繋がることもあります。
    場合によっては新学期に、食物アレルギーの説明を担任教諭から学級に対して行ってもらうことも考えましょう。
    ※自分がやろうとしたことを達成できるという信念のこと(Bandura. Self Efficacy: The Exercise of Control. 1997)

監修 昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生

監修
昭和大学 医学部
小児科学講座 教授
今井 孝成 先生

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