原因別アナフィラキシー
|食物アレルギー
|代表的な食物アレルゲン
「小麦」は、鶏卵、牛乳とともに
“3大アレルゲン”のひとつです。
その特徴や日々の食生活において気をつけておきたいポイントを解説します。
監修
昭和医科大学 医学部 小児科学講座
教授 今井 孝成 先生
小麦は鶏卵、牛乳とともに“3大原因食物”のひとつで、小児では即時型が中心で、成人になると食物依存性運動誘発
アナフィラキシー(FDEIA)が増えてくるといわれます1)。
こちらでは小児の即時型について解説します。
小麦のタンパク質は、水に溶ける「アルブミン」「グロブリン」と、水に溶けない「グルテン」に分けられ、グルテンは
さらにグリアジンとグルテニンに大別されます。
このうち、グルテンが食物アレルギーの主な原因です。
パンや麺の多くは小麦で作られているため、お米を中心に献立の代替を考えます。米粉の他、コーンスターチ、上新粉、
タピオカ粉を組み合わせたり、麺類の代わりに春雨やビーフン、フォーにしたりするなどの工夫で、メニューにバリエーションをつけることができます。
揚げ物の衣には、小麦不使用のコーンフレークやコーングリッツ※が便利です。小麦を使わないパスタやケーキ、調味料なども市販されていますので、うまく活用するとよいでしょう。
市販の米粉や米粉パンは製造過程で小麦のグルテンを使う場合があり、購入する際はグルテンを含まないものを選びましょう。
また、原材料として使用していなくても同一空間で小麦を使用する場合は、調理の過程で混入したり吸い込んだりすることもあるので、重症の小麦アレルギーの方は注意が必要です。
※コーングリッツ:粒状に粉砕された乾燥とうもろこし
小麦は、パンをはじめ、うどん、スパゲティ、中華めんなどの麺類、餃子の皮、カレーやシチューのルー、お菓子、麩、
調味料など、さまざまな加工食品に使われています。特定原材料として表示が義務づけられていますので、食品表示には注意を払いましょう。
なお、醤油は原材料に小麦が使われており、原材料表示にも小麦の記載がありますが、醸造の過程で小麦のタンパク質が完全に分解されるため、小麦アレルギーであっても基本的には醤油を除去する必要はありません。
また、「麦芽糖」は「麦」という文字が含まれていますが、これは大麦を発芽させ、とうもろこしなどのデンプンと組み
合わせて作られるもので、小麦とは基本的に関係がありません3)。ただし、製造過程や原材料に小麦や大麦が含まれる場合があり、その場合はアレルギー反応を引き起こす可能性があります。小麦アレルギーの患者さんは、製品の原材料表示を確認し、必要に応じて製造元に問い合わせることが勧められます。
また、麦ごはんなどで使用される大麦(別表記:もち麦、押し麦、米粒麦、丸麦、はったい粉など)は、重篤な
小麦アレルギー患者さんでアレルギー反応を引き起こす可能性があります。また小麦アレルギーがなくても、大麦にだけ反応する場合もあります。食べられるかは医師の確認が必要です。なお、大麦を原料とした麦茶は、基本的に除去する必要はありません。
またよくみる「グルテンフリー」に定まった定義はないため、小麦が全く含まれないかどうかはわかりません。一方で
「ノングルテン」表記は、小麦アレルギーであっても安心して使用できます。
参考文献
本サイトに掲載された健康情報は啓発を目的としたものであり医師等のヘルスケアプロバイダーに対する相談に取って代わるものではありません。
患者さんの治療に関しては、個々の特性を考慮し医師等のヘルスケアプロバイダーと相談の上決定すべきものです。