原因別アナフィラキシー
|食物アレルギー
果物
昭和大学 医学部 小児科学講座 教授 今井 孝成 先生
ビタミンや糖分が豊富な果物。日頃のお子さんの食事やおやつでも、ジュースやケーキ、ゼリーなどで食べる機会が多い果物ですが、アナフィラキシーなどのアレルギー症状を引き起こすことがあります。果物アレルギーについて知っておきたいポイントをまとめました。
果物アレルギーの多くは、花粉症と関係があります。
ある果物を食べた直後に、唇や舌、口の中が腫れたり、かゆみやイガイガする感じがあらわれたりする症状を「口腔アレルギー症候群(OAS)」といいます。通常は口周囲の症状だけで、全身症状をともないません。中でも花粉症を有する方が果物や野菜を食べた後に症状があらわれるものを花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)といいます。これは、花粉のタンパク質と似通ったたんぱく質を含むものを食べたときにアレルギー症状が引き起こされますが、このたんぱく質は熱や消化で分解されやすく、加熱すれば食べられるようになることが多いです。
どの果物で症状があらわれるかは、どの花粉にアレルギーがあるかによってことなります。例えば、ブタクサ花粉とメロンやスイカやバナナ、シラカバ花粉とリンゴ、サクランボ、モモ、キウイ、マンゴーなどの組み合わせがあります。
しかし、果物アレルギーの全てが口腔アレルギー症候群(OAS)で発症するわけではありません。アナフィラキシー症状をともなう場合もあるので注意が必要です。
ラテックスアレルギーの場合、果物がアナフィラキシーの引き金となることがあります。
植物のゴムノキから抽出されるラテックス(天然ゴム)も、アレルギーの原因物質になります。特に外科医や歯科医、看護師など、日常的にゴム製品を多用する職種に多い傾向があります。このラテックスアレルギーがあると、特定の果物によってアレルギー症状が起こることがあり、「ラテックス-フルーツ症候群」と呼ばれます。
「ラテックス-フルーツ症候群」に関係する果物には、アボカド、バナナ、キウイ、パパイヤ、イチジク、メロン、マンゴーなどがあり、その機序※は花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)と同様に、ラテックスに含まれるタンパク質と、これら果物に含まれるタンパク質の構造が似通っているために起こります。
「ラテックス-フルーツ症候群」の主な原因となるタンパク質は、加熱や消化でも分解されにくく、食べないようにすることが基本となります。果物に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維などは、食べられるその他の果物や野菜、その他の食物で補うことができます。栄養素のバランスが偏らないように、食事やおやつの中での組み合わせを工夫しましょう。
※機序:しくみ、メカニズム