特集・メッセージ
NHKエデュケーショナル
オンラインフォーラム
小児の食物アレルギー 新常識
Part1食物アレルギーって、どんな病気?
久田 そもそも食物アレルギーとはどんな病気なのか、今井先生教えていただけますか。
今井 特定の食物に対して、自分の免疫機能が過剰に反応してさまざまな症状が出てしまうことをいいます。免疫機能とは本来、菌やウイルスなど、体に入ってほしくないものを体の外へと排除するはたらきです。しかし食べ物のように本来は体に入ってきてほしい、入ってこなければいけないものに対して、過剰に免疫機能がはたらいてしまう。それを排除しようとする過程でさまざまな症状が出てきてしまうのです。
久田 たとえばどんな症状が出てくるのでしょうか。
今井 特に皮膚症状は約90%の患者さんに出るといわれています。じんましんや腫れ、痒みが代表的な症状です。それ以外にも、咳などの呼吸器症状、それに伴う呼吸困難、また腹痛、下痢、嘔吐といった消化器症状があります。最も強い症状が、血圧が下がって意識を失ってしまうアナフィラキシーショックです。最悪、死に至るケースもあります。
久田 どのような食べ物が原因になるのでしょうか。
今井 定期的に消費者庁が全国調査 2)をしており、最新の調査では「卵(33.4%)」「牛乳(18.6%)」「木の実類(13.5%)」が上位を占めています。これまでは「小麦」が三番目に入ってきていたのですが、「木の実類」に変わったことが大きな変化です。もっとも、くるみやカシューナッツ、アーモンドなど木の実類はまとめて集計しているので、これらを細分化すれば、「卵」「牛乳」「小麦」が三大原因食物で、4番目に「くるみ」という状況です。
久田 食物アレルギーの症状はいつぐらいから出始めるものなのでしょうか。
今井 実は0歳児が圧倒的に多く、その後は年齢を経るごとに減っていきます 3)。0歳〜1歳のお子さんのアレルギーのほとんどが「卵」「牛乳」「小麦」ですが、小学校に上がるくらいの年齢になると7〜8割の方が食べられるようになるといわれます 4)。
久田 食物アレルギーが乳幼児に多いのはなぜなのでしょう。
今井 まだ十分に解明されていませんが、一つは消化吸収の機能が未成熟であることです。もう一つは皮膚感作です。最近になってわかってきたことですが、食べ物は必ずしも口からだけでなく皮膚からも入ってきて、アレルギーを起こしてしまうことがあります。
久田 ご家族のアレルギー体質も何か関係があるのでしょうか。
今井 ご自身がアレルギー体質だと、それが子どもに遺伝するのではないかと心配される方も多いと思います。確かに体質は遺伝する部分もありますが、ご自身がアレルギー体質だからといって、必ずしもお子さんがそうなるとは限りません。またご自身と同じ症状が発症するとも限りません。体質が遺伝する中で、それぞれのお子さんが発症する病態もまた変わってきます。
参考文献
1) 斎藤博久, 海老澤元宏:「食物アレルギー」診断と治療社,2007年1月1日
2) 令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書 (caa.go.jp)
3) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:「食物アレルギー診療ガイドライン2021」,p51,2021
4) 小児内科53巻6号: p873-878,2021