特集・メッセージ
NHKエデュケーショナル オンラインフォーラム
小児の食物アレルギー 新常識

Part2食物アレルギー、どう診断するの?

久田 山下さんのお子さんも食物アレルギーをお持ちのようですが、いかがですか。

山下 生後7か月でヨーグルトを食べたとき、口の周りに発疹が出たことで検査を受け、卵と牛乳のアレルギーがわかりました。経口負荷試験を受け、半年から1年ほどかけて少しずつ食べていって、今ではほぼ普通の食事を摂っています。

久田 症状が出たとき、ご家族はやはり心配だと思います。佐藤さん、そんなときはどんな検査を受ければいいのでしょうか。

佐藤 一番簡単に受けられるのは血液検査です。ただし、血液検査だけで食物アレルギーの診断はできません。あくまでもアレルギー体質があるかどうかの目安です。具体的には体の中にアレルギー反応を引き起こすIgE抗体があるかどうかを調べます。IgE抗体が食べ物のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)とくっつくと、免疫に関連する細胞からアレルギー症状を起こす物質が出てきて、じんましんや咳、腹痛などのアレルギー症状が引き起こされます。IgE抗体が全くなければ、食物アレルギーはまず疑わなくていいでしょう。ただし、注意いただきたいのは、IgE抗体の値が低くても、非常に重篤な症状が出るケースがあります。また値が高くても症状が出ない方もいます。IgE抗体の値の高さは、症状の重症度と関係しているわけではなく、「症状が出る可能性の高さ」を示しているわけです。

久田 血液検査だけでは診断を確定させることはできないとのことですが、確実に分かるためにはどうしたらいいのでしょう。

佐藤 「食物経口負荷試験」という検査を受けることになります。これはアレルギー症状を起こす、あるいは起こす疑いのある食べ物を医療機関で医師の管理のもとで食べ、何をどのくらい食べられるのかを調べる検査です。

診断を確定させるにはどうしたらいい?

久田 どうしてこのような試験が必要なのでしょうか。

今井 試験の役割は大別すると二つあります。一つは初めてアレルギー症状が出たとき、その診断を確定させるためです。もう一つは、診断が確定した後、どのくらい食べられるかを評価するためです。食物アレルギーは年齢を経るにつれて治っていくケースが多いのですが、人によって治り具合は異なります。血液検査の値を参考にしながら、食べられる量を見定めるということです。

久田 この経口負荷試験はどこでも受けられるのでしょうか。

今井 小児アレルギー専門の医師がいる病院やクリニックで受けることができます。食べられるかどうかわからない、食べたらアナフィラキシーショックを起こすかもしれないため、慎重に試験を行わなければなりません。必ず医師の管理の下で行ってほしいと思います。
食物アレルギー研究会のホームページを見ていただくと、実施している施設を地域別に探すことができます。また血液検査を受けた病院などで試験をおこなっているようであれば、そちらで受けていただいても構いません。

食物アレルギー研究会
https://www.foodallergy.jp/

久田 経口負荷試験で食べられる量を調べ、少しずつ食べていくということが大事なのでしょうか。

今井 そうですね。食物アレルギーの診療は大きく変わってきています。かつては、診断されたら完全除去指導がおこなわれてきました。しかし最近では、少量でもいいから食べ始めていったほうが、完全除去より有用ではないかと考えられるようになっています。もちろんアレルギー症状が重症の場合は完全除去しなければならないのですが、中等症、軽症のお子さんには、食べられる量を食べていきましょうという指導に変わってきています。
ただ、ネットなどでも検索すれば「食べさせたほうがいい」という情報が出てきますので、試験を受けずご家庭で食べさせる方もいらっしゃいます。結果的に治ればいいのですが、なかにはアナフィラキシーを起こすケースもありますので、必ず医師の指示に基づいて食べさせるようにしてください。

久田 決して自己判断をせず、医療機関でしっかり見極めてもらうということですね。このほかにご家庭で気をつけたほうがいいことはありますか。

佐藤 親が分量を量って作った料理や加工されている食品など、食べ物にはいろいろありますので、何を食べていいかを医師に相談、確認をしていくことが大切です。また、稀なケースですが、経口負荷試験で陰性でも、症状が出てしまうお子さんもいます。さまざまな要因が考えられるのですが、症状が出た場合どのように対応したらいいかを医師に聞いておくことも必要です。
また定期的に経口負荷試験を受けていただく必要があるので、ご家庭で食べた量や回数などを医師に伝える必要があります。メモでもいいですし、最近では症状や食事を記録できるアプリも出ています。症状が出たときの写真を撮っておくこともできますので、こうしたアプリを活用してもいいかと思います。