特集・メッセージ
NHKエデュケーショナル オンラインフォーラム
小児の食物アレルギー 新常識

Part5正しい情報を得るために

久田 日常生活で気をつけなければいけないことが多いと、なかなか大変ですね。

佐藤 ご本人だけではなくて、ご家族の方の負担も大きいと思います。そういったつらさや大変さを共有できる場があると違いますよね。実際に年齢が大きくなってきたときに、同じ食物アレルギーを持つ友だちがいて、情報交換ができて良かったという話も聞きます。

久田 仲間がいるとかサポートしてくれるところがあるのは心強いですね。こうしたグループは各地にあるのでしょうか。

佐藤 専門医の先生が所属している病院に患者会があったり、地域によって食物アレルギーを持つお子さんのご家族がグループを作っていたりなど、さまざまな団体があります。ただし必ずしも正しい情報を発信しているわけではないので、きちんとリサーチしてから参加されるといいと思います。

久田 こうした団体に所属する以外にも、正確な情報を集める方法はあるのでしょうか。

今井 昨今は食物アレルギーとネットで検索すればいくらでも情報が得られますが、その中には必ずしも正しいとはいえない情報が含まれています。厚生労働省が支援し、日本アレルギー学会が運営しているサイト「アレルギーポータル(https://allergyportal.jp/)」があります。各都道府県におけるアレルギー疾患の拠点病院や、専門に診てくれる病院のリスト、患者さん向けの資料などもたくさん掲載されていますので、こちらをぜひ参考にしてください。このほか、独自の取り組みをしている都道府県もあります。東京都ではアレルギー情報ナビというホームページを持っていて、正しい情報を発信しています。正しい情報を得て、のびのびと子育てしていただけたらと思います。

アレルギーポータル
https://www.foodallergy.jp/

久田 正しい情報を得る、適切な診断治療を受けていくということがとても大切なのですね。それでは最後にひと言ずつ、メッセージをお願いします。

山下 食物アレルギーに悩んでいる方はとても多いと思います。ぜひ、今回紹介されたアレルギーポータルを参考にしたり、医療機関に相談したりして最新の情報を得るようにしてください。適切な治療を受けることで、お子さんやご家族の負担が減っていけばいいなと思います。

佐藤 食物アレルギーをお持ちの方は、じつは周りにたくさんいらっしゃると思います。今回を機に、周囲にそういう方がいるかもしれないということを気にしてもらえたら有り難いです。そして、ここ十数年でいろいろなことが変わってきたのと同じで、今正しいといわれていることが10年先にも正しいかはまだわかりません。したがって今日得た知識を、1年に1回などのペースでアップデートしていただいて、つねに自分が正しい情報に触れているかを意識していただけたらと思います。

今井 正しい情報、正しい診断を得るということが第一です。そして卵、牛乳、小麦アレルギーは治る可能性が高く、診断されても治りやすくなるために、食べられる量があるなら少量でも食べていくことが大事です。食べられる量は人それぞれなので、食物経口負荷試験を受けてその量を見極めます。ただし、原因食物を食べていくことはアナフィラキシーのリスクがありますので、医師の指導なく家庭で少量ずつ食べることは決して行わないようにします。治っていくまでには時間がかかりますし、卵・牛乳・小麦以外の食物は残念ながら治る可能性が高くはありません。そこでアレルギー表示などをしっかり学ぶことによって、安全に食生活の選択を広げていきます。年齢が高くなれば親御さんの管理が難しくなり、誤食をする機会も増加します。このため誘発症状に応じた対応ができるようにしておくことも大切です。とくにリスクの高い方々にはアドレナリン自己注射薬がその子の命を救いますので、不安に感じることがあれば積極的に医師に相談してください。食物アレルギーがあっても、安全で豊かな食生活を送ることはできます。そのためにも正しい診断をしてくれ、正しい治療方針を与えてくれる医師を見つけることが大切です。

久田 では、これでパネルディスカッションを終えたいと思います。パネリストの皆様、最後までお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。